遺言の実際…不倫相手へ

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不倫相手への遺言…実際には



遺言の実際…不倫相手へ

妻がいて不倫相手がいて。その不倫相手に財産を遺す遺言が出てきました。不倫な関係の維持継続を図るため遺言は無効なのですが、不倫相手の生活維持に必要なものであれば無効にはならない…。

民法(公序良俗) 第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


実際の裁判所の判断をみてみましょう。

■不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しない。(最判・昭和61年11月20日)
「原審が適法に確定した,(1)亡雪夫は妻である上告人……がいたにもかかわらず,被上告人と遅くとも昭和44年ごろから死亡時まで約7年間いわば半同棲のような形で不倫な関係を継続したものであるが,この間昭和46年1月ころ一時関係を清算しようとする動きがあったものの,間もなく両者の関係は復活し,その後も継続して交際した,(2)被上告人との関係は早期の時点で亡……の家族に公然となっており,他方亡……と上告人……間の夫婦関係は昭和40年ころからすでに別々に生活する等その交流は希薄となり,夫婦としての実体はある程度喪失していた,(3)本件遺言は,死亡約1年2か月前に作成されたが,遺言の作成前後において両者の親密度が特段増減したという事情もない,(4)本件遺言の内容は,妻である上告人……,子である上告人……及び被上告人に全遺産の3分の1ずつを遺贈するものであり,当時の民法上の妻の法定相続分は3分の1であり,上告人……がすでに嫁いで高校の講師等をしているなど原判示の事実関係のもとにおいては,本件適言は不倫な関係の維持継続を目的とするものではなく,もっぱら生計を亡……に頼っていた被上告人の生活を保全するためにされたものというべきであり,また,右遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえないとして,本件遺言が民法90条に違反し無効であると解すべきではないとした原審の判断は,正当として是認することができる。」

■不倫な関係の維持継続を図るためにされた全財産についての包括遺贈が公序良俗に反し無効。(東京地判・昭和58年7月20曰)
「右認定によれば,亡……と補助参加人とは不倫な関係にあったものであり,本件遺言がなされたときは両者間に右関係が生じて間もないころであって,亡……は右関係の継続を強く望んでいたが,補助参加人はむしろそのことに欝踏を感じていた時期に符合すること,当時50才の初老を迎えていた亡……が,16才年下の補助参加人との関係を継続するためには,財産的利益の供与等により補助参加人の歓心を買う必要があったものと認められること,本件遺言後両者の関係は親密度を増したことなどの諸事情を考え合わせれば,亡太郎は補助参加人との情交関係の維持,継続をはかるために,本件遺贈をなしたものと認めるのが相当である。そして,本件遺贈は,被告……が居住する居宅である前記建物及びその敷地である土地を含む全財産を対象とするものであり,それは長年連れ添い,亡太郎の財産形成にも相当寄与し,しかも経済的には全面的に夫に依存する妻の立場を全く無視するものであるし,また,その生活の基盤をも脅かすものであって,不倫な関係にある者に対する財産的利益の供与としては,社会通念上著しく相当性を欠くものといわざるを得ない。したがって,本件遺贈は,公序良俗に反し無効というべきである。」

■不倫な関係にある女性に対して包括遺贈する旨の遺言が公序良俗に反して無効。(東京地判・昭和63年11月14曰)
「……は,妻である原告がいながら,被告と長年不貞関係を継続し,そのため原告との婚姻関係が破綻したこと,本件遺言は……の全遺産を不貞の相手である被告に遺贈するという内容のものであること,太郎の遺産の主要なものである本件建物は,原告と太郎の婚姻生活を維持するために職人されたものであること,原告は,本件建物の賃料収入を生活賀として生活しており,他には特に収入がないこと,太郎は,原告の右事情を知りながら本件遺言をしたこと,太郎は,原告に対して離婚を求めていたが,太郎と原告間の婚姻関係破綻の事情からして,離婚の際には,太郎から原告への財産分与及び……の原告に対する慰謝料の支払が当然予想されるところ,原告から財産分与及び慰謝料の支払を求められていることを知りながら本件遺言をしたことなどの諸事傭を総合すると,太郎は,本件遺言をするまで,約19年間被告と同棲してきたことや本件遺言は,太郎が死亡する約1年7か月前の時期に,被告のそれまでの協力や今後被告に世話になることに対する太郎の感謝の気持ちからなされたものであるといった事惰を考慮しても,太郎のした本件遺言は,公序良俗(民法90条)に違反し無効であるといわざるをえない。」

■妾に対する土地建物の遺贈は妾の生活維持に必要なものである限り公序良俗に違反しない。(大阪地判・昭和43年8月16日)
「……は,妻があるのに,……と関係を続けていたのであるから,同女との関係は,いわゆる妾関係であったというべきところ,元来,妾に対して,金銭その他の物を贈与することが,その不倫な関係の維持継続を強要するためのものである場合には,右のような贈与は,公序良俗に反し,無効なものというべきであるが,妾に対する右のような贈与が,その生活を維持するのに必要な範囲内のものである限り,これをも公序良俗に反し,無効なものというべきではないと解するのが相当である。しかして,これを本件についてみるのに,すでに判示したところとく証拠略>を総合すれば,……が……に対し,本件(二)の土地及び本件建物を遺贈したのは,……において,……が老令の上,被告ら家族と別居していた自分と生活を共にしてくれたことについて,感謝する気持があり,かつ,同女が右土地,建物を保有することになれば,同女の将来の生活も安心できるであろうと配慮したことによるものであることが認められ,……が右遺贈により,同女に対し,特に将来,自分との関係の維持継続を強要しようとしたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,前記遺言をもって,直ちに,公序良俗に反する無効なものということはできないから,被告の抗弁は,理由がない。」


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