遺言の実際…共同遺言

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共同遺言…実際には



遺言の実際…共同遺言


共同遺言は効力をもちません。しかしそれを知らなければつくってしまいます。どのようなものが共同遺言とされるのでしょうか。

実際の裁判所の判断をみてみましょう。

■作成名義の異なる二つの遺言書が別葉に記載され,契印がほどこされた上合綴されているが,容易に切り離すことができる自箪証書遺言について,民法975条により禁止された共同遺言にはあたらないとされた事例。(最判・平成5年10月19日)
「原審の適法に確定した事実関係は,本件遺言書はB5判の罫紙4枚を合綴したもので,各葉ごとに……の印章による契印がされているが,その1枚目から3 枚目までは,……名義の遺言書の形式のものであり,4枚目は被上告人……名義の遺言書の形式のものであって,両者は容易に切り離すことができる,というものである。右事実関係の下において,本件遺言は,民法975条によって禁止された共同遺言に当たらないとした原審の判断は,正当として是認することができる。」

■同一の証書に2人の遺言が記載されている場合は,そのうちの一方に氏名を自書しない方式の違背があるときでも,右の遺言は,民法975条により禁止された共同遺言にあたる。(最判・昭和56年9月11日)

■夫婦の共同名義で作成された自筆証書遺言について,妻はその作成に関与しておらず,また,その作成の意思もなかったこと,その内容も専ら被相続人所有の財産の処分に関することのみが記載されていて妻の遺言としては何ら法律上の意義を持たないものであることから,夫のみの単独の遺言として有効であると認めた事例。(東京高決・昭和57年8月27日)
「一件記録によると,本件においては,別紙2のとおりの内容が記載された「遺言状」と題する書面(以下「本件遺言書」という。)が作成されており,その被相続人……(以下「被相続人」という。)の署名の下及びその左横には「…」と刻された丸形の印章による押印があり,右署名の下部に記戟された「母……」の名の下及びその左横には「…」と刻された小判形の印章による押印があること,被相続人は,生前,つねづね,相手方より子との間で,被相続人と相手方……のいずれかが死亡したときは,本件遺言書の冒頭部分記載の土地建物は,それぞれの子らに分与し,残余の財産は,相手方より子が取得し,又は被相続人に留保するようにしようという趣旨のことを話し合っていたこと,しかし,これを被相続人と相手方……の共同の遺言書に作成するということは格別話し合ったことはないこと,本件遺言書は,これを作成することについて,相手方より子には何ら話をせずに,被相続人がすべて単独で作成したものであり,被相続人が全文,日附及び自らの氏名を自書して自己名義の押印をし,相手方……の氏名も同人が書き,「…」名義の押印も同人がしたものであること,相手方……は,被相続人が本件遺言書を作成したことを同人の死後まで全く知らず,本件遺言書に自らの氏名が記載されていることも知らなかったこと,本件遺言書に記載された不動産はすべて被相続人の所有であり,相手方……が所有あるいは共有持分を有するものはないことが認められる。そして,遺言は法律行為の1つであって,一定の法律効果を伴うものであるが,右のような本件遺言書の内容は,被相続人所有の財産の処分に関するもののみであって,相手方……の遺言としては何ら法律上の意義をもたないものであることからすると,本件遺言は,一見,被相続人と相手方……との共同遺言であるかのような形式となってはいるが,その内容からすれば,被相続人のみの単独の遺言であり,被相続人が自己の氏名の下に,相手方……の氏名を書き加えたのは,前記のように,それぞれの子に対する財産の配分について,相手方……との間でつれづね話し合っていたという経緯からしてその遺言における財産の配分については,相手方……と相談の上,決めたものであり,その内容については,相手方……も同じ意思である旨を示す趣旨から書き加えたものと解するのが相当であって,本件遺言書は,被相続人の自筆証書による単独の遺言として有効であるというべきである。」


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