ドラマ…ワープロ遺言

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ドラマ…ワープロの秘密証書遺言



ドラマ…ワープロ遺言


「ワープロの秘密証書遺言…筆者名申述で自筆証書遺言と同様に有効!」

自筆証書遺言


妻子がいない、Aさん。今のままでは、遺産は全て兄弟のもの。そこで、弁護士に依頼して、「遺言書」を書くことにしました。弁護士は、『遺言執行人』になります。

遺言は…〈不動産を売却して、費用等を差し引いた残額を財団法人に遺贈する〉‥という内容です。弁護士は、「遺言書」をワープロで作成して、Aさんの署名押印をもらいました。

さて、『自筆証書遺言』は、全てが自筆であることが必須です。徹頭徹尾、Aさんの自筆でなければNGです。

この《ワープロ遺言書》は…このままでは、「自筆証書遺言」としては、無効なのです。

秘密証書遺言

「自筆証書遺言」とは別に、『秘密証書遺言』があります。「秘密証書遺言」は、民法970条によって、次の四つの要件が求められています。

  1. 遺言者が署名し印を押す
  2. 遺言者がその証書を封じ証書に用いた印章をもってこれに封印する
  3. 遺言者が公証人と証人二人の前に封書を提出して、自己の「遺言書」である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述する
  4. 公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載し遺言者及び証人と共にこれに署名し印を押す。


ワープロ遺言書

「秘密証書遺言」は…「自筆証書遺言」のように、《自筆》であることは求めていません。遺言を残したい人が自分で『署名押印』さえすれば、文書は、他人が書いても良いわけです。

ですから、ワープロで作成した文書も有効です。《自筆の署名》と押印があれば、良いのです。

ワープロを打つのは、自分でも赤の他人でもOK。《長文の自筆証書遺言》を書くのは、一苦労。でも、《ワープロ遺言書》なら、容易に作成できますね。

ワープロを打ったのは…

こうしてAさんの弁護士は、ワープロで「秘密証書遺言」を作成したわけです。
Aさんは、公証人と弁護士ら証人の前で、〈私の自筆による自己の遺言書である〉‥と申述しました。公証人は、申述の通り、封紙に記載します。Aさんは、翌年亡くなりました。

ところが…Aさんの兄弟が、《遺言無効の確認》を求め、裁判を起こしたのです。

Aさんが、〈遺言書は自筆である〉‥と申述したことが、問題でした。ワープロを打ったのは、弁護士とその事務員でした。

Aさんが、自分でワープロを打ったのであれば、良かったのです。

筆者違いの遺言は無効

前記の「秘密証書遺言」の要件(3)に…〈遺言書の筆者の氏名住所を申述しなさい〉‥と定められています。

「秘密証書遺言」の遺言者は、署名押印するだけで良し…ということは、〈筆者は別である〉ことが、前提になっています。ですから、〈筆者が誰なのか〉を、明確にすることが求められているわけです。

Aさんは…《遺言書は自筆》ではなく、《筆者は弁護士》‥と申述すべきだったのです。
この遺言書は、無効にされてしまいました。
(大阪高裁平成13.12.4.)

筆者違いの遺言・その2

別のケースです。

ある『相続人』の嫁が…《遺言書の書き方本》の見本通り、ワープロで、〈全財産を○○に〉‥という「遺言書」を作成しました。『相続人』が自ら記入したのは、日付と名前だけです。

この『相続人』は、入院中でした。そこで、公証人と証人役の弁護士に、病院まで来てもらって申述をしました。「秘密証書遺言」の完成です。

しかし…『相続人』は、〈遺言の筆者は私である〉‥と、申述していたのです。〈筆者は嫁である〉‥と、申述すべきでした。

このケースも裁判になり、「遺言書」は、無効になってしまいました。
(最高裁平成14.9.24.)

筆者を明確に!

二つの「遺言書」は、どちらも《筆者相違》の判明により無効となりました。それぞれが〈弁護士だ〜〉〈嫁だ〜〉‥と、公明正大に申述していれば有効だったのです。

《ワープロ遺言書》そのものは、ワープロを他人に打ってもらったとしても、有効です。注意すべきは…『筆者名』を、正しく申述することなのです。

二人の証人を連れて公証人役場に行けば、《ワープロ遺言書》も「秘密証書遺言」です。効果は、「自筆証書遺言」と同様です。公証人手数料は、11,000円。わずかな負担で、《有効な遺言書》になるのです。

ただし…未成年者や推定相続人、受遺者とその配偶者や直系血族は、証人になれません。公証人が「遺言書」を保管することもありません。『公正証書遺言』とは、違うのです。

確実なのは…やはり、「公正証書遺言」です。

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